GOLDEN Q

GOLDEN Q

GOLDEN Q


 CDについてまともに書くなんて絶対できない!!無理無理と思っていたのですが(このブログ全体について言えるけど、いくら好きだからって「素敵ー」とか「カッコいい」とか誉め称えるだけのような、記事は書きたくないんです。ちょっと、そういうのから一線をおいた姿勢で書きたいって心構えは持ってる)
 何か今なら出来るかもと思ったので、試しにやってみます 笑
 前にもここで触れたシャ乱QオールナイトニッポンのOAがちょうど、GOLDEN Qの発売直後だから、曲を沢山かけていて、いいかもと思い最近よく聞いてるんです。このアルバムは聞きすぎてボロボロです。ケースの蓋と本体部分がつながってないの。孤独のインナースリーブも読みすぎてボロボロ 笑 好きだから大切に扱うって概念がなくて。むしろ、徹底的に使いこんで味を出そうと考えるタイプ*1
 前作のジャケットがヘリコプターの前で撮影してて、今回はそれが飛行機*2になっていて、そういうところからわかりやすく「お〜売れたんだな」とかバンドとしての成長を感じたりする。GOLDEN Qってタイトルもまんまだし、毛皮羽織ってるのも、「わかりやすいゴージャスさを狙った」みたいな発言をメンバーが当時していた気がするけど、定かではありません!!  で肝心の内容はというとそういう世間が見る「わかりやすいシャ乱Q」を結構裏切ってる。当時はわからなかったけど*3今考えれば、これを出したのはかなり冒険なんじゃなかろうかという気がする。世間が作り、ある種自分らも便乗していたパブリックイメージとあまりに乖離してる。そういうのって博打としては危険じゃない?*4わかりやすく言うと浜崎あゆみが豹コスプレしたDutyをリリースした状況に似ているというか。(Dutyってすごい暗くてとてつもない負のパワーを放ってるから、これが売れるってすごいよなあって思ってたのです。)つまり「裏切る」ことで成立しているという点で共通しているかなと。前置きはこの辺にして。楽曲について書いていきましょうか。(文章のトーンと読みやすさを考慮して、敬称略で書くことを了解ください)
 1:Baby!I NEED YOU  作詞:つんく 作曲:たいせー
 「シャ乱Qってこの程度だと思ってるんでしょ」っていうような世間のイメージをモロ利用した楽曲。1曲目だし、とりあえず力を抜いて聞いとけばいいんじゃない?むしろ油断させとこうぜ的な。「つんくの歌唱力があるから成り立っている楽曲」ってことを誰かが書いてて、すごく納得した。どちらかというと単調なメロディなんです。
  2:大阪エレジー 作詞:つんく 作曲:はたけ
 前の曲で、「真っ赤な洋服きめりゃ まっ 結構そこそこいけてるんだ」とシャ乱Q節全開に歌ってたのに、ここでは

僕と同じの 頼んだり
週刊誌にグチッたり
この後 どこに行きたいか
「せーの」で言い合ったり
そんな全てを愛してる

 なんて歌ってしまう。これは第一の裏切り。シャ乱Qにこんな幸せな恋愛を歌ったものは極めて稀。さらにまことじゃなく、つんくがこういう詞を書いたことが衝撃だった。たぶん、ここでこの引き出しを開けられたことが後のプロデュースワークに生きてくるんだと思う。
 3:泣かないで 作詞・作曲:つんく
 「大阪エレジー」で作り上げたいい感じの雰囲気を、見事にブチ壊すようなこの曲を次に持ってくることが彼らなりの「ロック」なのかなと 笑 いつも以上にシャ乱Q節冴えまくりのこの曲。この前ふと気づきました。これは「演歌」なんだと。これはたぶんじっくり詞を聞く歌。特に

くちびるも 減らしたローンも
一間の部屋もトキメキも
二人でずっと
のり越えてゆくはずだった

歌謡界にずっと残って欲しいフレーズのひとつ。減らしたローンって?!一間の部屋って?!何回、この部分につっこみ入れたかわからない。歌詞に負けじと、つんくの声もどんどん途中から「泣き」入ってくるし。これたぶん、歌詞のしんどさは「シングルベッド」を確実に上回る。主演映画撮って*5「虹色橋」作るずっと前から、実は演歌歌ってたんですね。でも、それもシャ乱Qの「ロック」う〜ん…
 力入りまくりで3曲目で疲れたから、一時中断しよ。アデュー。 気をとりなおして…
 4:脱出 作詞:まこと 作曲:つんく
 ここで一回小休止入れようか的ポジション。よくも悪くも「やっつけ」で作っちゃった印象が残る曲。あと、珍しくサビが気持ちよく突き抜けていかない。タイトル通り「演り逃げ」ってことでいいのかな?笑
 5:こんなにあなたを愛しているのに 作詞:まこと 作曲:つんく
 中途半端な前の曲を消化しきれず、引きずってても、「まぁええわ」って納得させられてしまう。バラードなんだけど、一気に曲の世界に引き込む力を持っている。一瞬一瞬の感情を情熱一本やりで歌ってきたこれまでを考えると、こういう体温が残る歌を演れるようになったのはバンドにとって大きかったと思う。こんなに〜以前と以降では歌の中に流れる時間の質が変わっている。点から線へ。幅を持つようになってきた。
 6:ネオン 作詞・作曲:つんく
 アルバムの中でもわりと地味めな曲で歌詞の内容も、4曲目の脱出に近い。だけど、最後に

みんな何を 見つめてるの
意味もなく照らしてる
この街のネオンの様に

って歌詞が来ることによって、ぐっと深い意味になっている。そのことに気づいてから、この曲を見る目がガラリと変わった。だから、脱出とは似て非なるもの。居心地の悪さを感じて、街を去る男。でも女のことは好きで別れることにはまだ未練がある。ふと見上げるとネオンサインが今日も相も変わらず瞬いている。ああ、本当は目の前にあるものに意味なんてないのかもしれない。だったら、この女を見ているということも本当は意味なんてないのかもしれない。そして、これから先会うであろう女たちの顔が一瞬浮かんでは消えた。ネオンのように。最後の2行に最大の物語が潜んでいるーそんな歌です。
 7:いいわけ 作詞・作曲:つんく
 4曲目の中途半端さも、5曲目の人肌の恋しさも、6曲目のやるせなさもー全てはこのいいわけのために用意していた「タメ」ではないか、という気すらする。それくらい爆発している。最近、のど自慢の幸ちゃんばかりが注目されるけど、本家もやっぱり聞いて欲しい。その刹那は刃物の如く尖って、今にも誰かを刺してしまいそう(つんくになら刺されてもいいと思う女子は沢山いるだろう)なほど。イッちゃってるとしか思えない歌。つんくの濃い化粧に、股間を弄る手に隠れてしまいがちだけど。たぶん、誰も歌詞なんて見てなかったんだろうなあ。泣かないでの「減らしたローン」じゃないけど。

僕がいなくなりゃ 誰か泣くかな
寝る前 たまに こんなバカな事とか考えたりした

なんて歌ってミリオン売ったのは本当にすごいと思う。「演歌」を越えてこれは「怨歌」あなたにとってのにくいひとを、つんくが代わりに復讐しているかのようにも映る。100万人の怨念を背負って(だから、椎間板ヘルニアになったのかとか言ってみる)。余談だけど、紅白でのパフォーマンスは本当に凄かった。
  08:純愛Ⅱ 作詞:まこと 作曲:はたけ
 カレーを一晩寝かすと美味しくなる。同じように聞けば聞くほど、この曲はジワリジワリと沁みてくる。最初に聞いたときから好きだけど、今はもっともっと好きになっている。聞けば聞くほど美味しくなる歌。

少し遠い女性(ひと)だけど
少しすごい女性だけど
音をたてひろがりゆく
愛は動き出した
それは似たものがなくて それは手ぐすねもなくて
だんだんと吸い込まれる
愛は動き出した

こんな大人になりたいなあと憧れていたけど、気配すらないまま気付けばもう21 …涙 愛が動き出して広がっていく感じが音にも出てて、気持ちいい。そして、夜が明ける蒼さも連想させる。誰かを好きになって、心にさざ波がたつときの感じが表現されている。これはぜひとも、今のつんくが歌うのを聞きたい。
 9:ジェラシー 作詞:まこと 作曲:はたけ  
 つまんない歌だなーと思って、あんまり好きじゃなかった 笑 ジェラシージェラシー言ってるだけじゃん!!って。だけど、ちょっとずつ歌詞の意味がわかってきてその奥深さに驚いた。

ジェラシー ジェラシー おまえの心の中
刻まれた歴史に
ジェラシー ジェラシー
俺に残されている 愛の伝え方は
何があるとゆうの 教えておくれ

つまり、この歌は好きなひとのこれまで歩んできた歴史にさえ、嫉妬を覚えてしまう歌なんです。その頃どうだったか、自分は決して知ることができないから。こんな愛があったのかーーという驚き。つまり、自分も似たような状況に陥ったから気付けたんですけどね。チュルッチュル〜(と誤魔化す)
 10:COCORO 作詞・作曲:つんく
 いつもとは違う涸れたようなつんくの声が聞けるので、まずはそこがひとつの味わいどころ。あとは…シチュエーションの妙味とでもいいましょうか。うっすい壁で住人同士の音なんて筒抜けのアパートで、自惚れて好きな女のために曲を作ってしまう−そんなしみったれた歌をよく歌うなと。誰にでもある恥ずかしい場面をいとも簡単に切りとってしまう。そこが一番の味わいどころ。

うるさすぎるんだ カベを蹴んなよ
最高のフレーズ 忘れそうになんだろ
(中略)あの娘が来る日まで あともう少し
センチメンタルな気分 だいなしなんだ
うるせえ!愛してる あの娘に唄を歌おう
練習してるんだ ギターひいて

11:雲 作詞・作曲:つんく
 エロも男も女も恋愛沙汰もこの唄にはない。ただ単語の羅列のみが続く。小学生の私には何が言いたい歌なのかよくわからなかった。だけど、中学校で国語に開眼した私はその要領で、解釈を試みた。今まで見えなかった背景が見えてきて、その感動は昨日のことのように覚えている。この唄の根底に流れるものはもはや、「哲学」なのだ。男と女のことを歌っていると見せかけて、哲学を語るーこれこそが第2の裏切りだ。
 色々な事物(ここでは平和をねがう歌や天気予報、大きな事件など)が自分たちの前を流れていくけど、何ひとつ自分たちはそれを掴むことが出来ず、ただ流れていく。確かなことなんて、この世の中にはないのかもしれない。だとしたら、腕の中にいる君をしっかり抱きしめて、その感触を覚えておこうかな。そんな歌。歌詞の中には一回も出てこない「雲」という単語は流れていく事物の比喩。今の自分にとってはどれだけ大きなこともいつかは流れていってしまうんだ…初めて私が学んだ「哲学」 鍵盤ハーモニカが何とも言えず、いい味だしてる。

ああ そんな事よりも 自分の未来を考えよう
今夜寝る前に 何をすべきかを
何の為かを
わかるまでこうやって 君に触れていよう

疲れたんで、残りはまた明日!!実はここまで来るのに中断しつつ2日かかってますからね。どんだけ書いてるのかって話です。
 おはようございます!!張り切ってラスト3曲いきましょう。
 12:泣ける話 作詞:まこと 作曲:しゅう
 耳障りがよいから、サーッと流れていきそうではあるんだけど。実は5曲目から11曲目までって、少しの隙もなく密度が濃い。ラストスパート前の給水ポイント的な曲。何も考えないで聞ける歌です。

泣ける話がそこら中で
生まれては 消え唄が流行る
泣ける話がそこら中で
生まれては 消え明日をつくる

っていうのは彼らなりの皮肉なのかな。流行り唄なんてそんなもんでしょっていう自嘲。
 13:涙の影 作詞:つんく 作曲:はたけ
 目の前の相手に文句をがーってぶつけてるような「いいわけ」があって、そして「こんなに〜」があって、ひとりで昨日を振り返る、この「涙の影」その差は僅か一枚のシングルCDなんだけど、その変化ってバンドとしては大きいように思う。人間不振に陥ってたから、この詞を書けたみたいなことをつんくが言っているけど。歌に沿って、自分自身を顧みると結構泣けてきます。でも、そんな涙の影も次のホワイトの序章にしか過ぎないんだけど…
 そう考えると雲の後に泣ける話を持ってきたのは成功だったんだなと思う。たぶん、なかったらものすごくしんどいことになってる。

忘れていたよ 日々に追われてて
大切だった 俺の思い出
眠れなくて 涙が出るよ 勇気が欲しくて
I say “Good-bye” 過ぎ去ってく 出会い達
泣きながら寝るよ 時の中で

14:ホワイト 作詞・作曲:つんく
 8分を越える大作。この唄は自分のこれまでを振り返った歌。涙の影で昨日を振り返ることは確かに変化だったけど、たった一曲の間に時間としてはものすごい飛躍がある。そして、雲では哲学を語りここでは人生を問うている。
 Baby!〜でまんまと聞くひとを油断させておいて、終着点が「人生とは」だったなんて裏切り否、もしかしたら騙しともいえるかもしれない。私は

ずっと 夢を追いかけて来たけれど
僕が来た道は あいつより正しい道かい

って部分はいつも泣きそうになる。 中盤で一度転調して

街は今夜も同じ様に
明かりをともし にぎやかで

ってフレーズが入る。誰かと居たって、賑やかな街にいたって、自分のこの孤独は消えることはないんだっていう冷めた目線を感じる。明かりについては色々な解釈の仕方があると思うけど、私は家家の明かりととった。外から見れば、どの家も賑やかで幸せそうに見えるけど、本当のところはわからない。同じようにひとりひとりが何かを抱えこんでいる。そんなことを暗喩しているようにも感じる。
 連綿と疑問形で歌詞が続いていくんだけど。最後には

君が好きだよ 君はどこなの
君が好きだよ なにをしてるの
君が好きだよ 君はどうなの…

と少し肯定して、それに伴って曲調も明るくなり、希望を残してこの歌は終わる。誰かを想う気持ちが結局はひとを明日へ向かわせるのかな、なんて。
 モヤモヤとしたものは消えないけれど、とりあえず君のことは好きだからそれだけでいいかと。与えられた現実を悲観せず、楽観もせずただ受け入れる。もうピエロの役割は要らないんだと。

みんなといたら孤独じゃないのかい

どれくらい笑われたら離れてくの

個人的にはこんな歌詞を歌ってくれるバンドがいたことがすごい嬉しかった。

総評

 実はここまでで原稿用紙25枚以上書いてるんです 笑 本当にバカですよね。だけど、これなら卒論シャ乱Qでいけそうだな、なんて思ったり。さてさて後は手短に。 つまりこのアルバムって、「変わろうとしている自分たち+受け入れられるか不安だから今までみたいな曲も入れとこう」っていう、迷いが混在していると思うのね。それを味ととるか、散漫ととるかはひとそれぞれだろうけど。
 きっと、ファンがついてこれるかって懸念はすごいあったんじゃないかなあという予測はできる。
 とりあえず、全国のブックオフで¥250で買えるので、興味のある方は買ってみてください。あー楽しかったけど、疲れた…もう1ヶ月はやりたくないな。

*1:CDはジーパンじゃありません

*2:個人的にANAってことでさらにポイントアップ

*3:だって小6だもん

*4:ちなみに前作のタイトルは勝負師(ギャンブラー)

*5:シャ乱Qの演歌の花道つんくさんは日本アカデミー賞新人賞もらってます